Radeonは安いのにAI開発では選びにくい?AMDはこれまで何をしていたのか

Radeonは安いのにAI開発では選びにくい?
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BTOショップでゲーミングPCを比較していると、Radeon搭載モデルの価格が目に入ります。

時期やショップ、搭載パーツによっては、同価格帯のGeForce搭載モデルより高いゲーム性能や大きなVRAM容量を備えていることがあります。限られた予算でゲーム性能を確保したい場合、Radeonは有力な候補です。

ところが、AIを利用したゲームやアプリの開発について調べると、次のような意見を目にします。

  • ローカルAIを使うならNVIDIAが無難
  • Radeonでは対応していないツールがある
  • 生成AIや機械学習まで考えるならGeForceを選んだほうがよい

Radeonはゲームを快適に動かせるGPUです。それにもかかわらず、ローカルAIまでゲーム制作に取り入れようとすると、なぜ選びにくいと言われるのでしょうか。

さらに疑問なのは、AMDもNVIDIAがGPU向けの開発環境を整備していることを知っていたはずだという点です。それでも現在まで大きな差が残っているなら、AMDは何をしていたのでしょうか。

この記事では、Radeonではゲームを開発できないという誤解を整理したうえで、ローカルAIではなぜGeForceが有利なのか、AMDが遅れた背景、現在の取り組みについて確認します。

目次

Radeonだからゲームを開発できないわけではない

最初に明確にしておくと、Radeonを搭載したPCでもゲームやアプリは開発できます。

Godot、Unity、Unreal Engineなどのゲームエンジンを使い、プログラムを書いたり、画像や3Dモデルを配置したり、制作中のゲームを動作確認したりする作業はRadeonでも可能です。

Radeonだからゲームエンジンが起動しない、プログラムを書けない、ゲームを完成させられないという話ではありません。

注意が必要なのは、生成AIや機械学習の処理に、自分のPCへ搭載したGPUを利用する場合です。

たとえば、次のような作業が該当します。

  • 画像生成AIでキャラクターや背景の素材案を作る
  • ローカルLLMにコードの作成や修正をさせる
  • AIによる音声や効果音の生成を試す
  • AIを使って画像や動画を加工する
  • AIモデルを自分のPCで動かしながら、ゲームへの組み込みや動作確認を行う
  • 機械学習用のモデルを自分のPCで学習または実行する

通常のゲーム制作と、手元のGPUを使ったAI処理は分けて考える必要があります。

クラウドAIを使うだけならRadeonでも問題になりにくい

ChatGPT、Claude、Gemini、GitHub Copilotなどをインターネット経由で使う場合、AIの主要な計算処理はサービス提供会社のサーバー側で行われます。

このようなサービスは、一般にクラウドAIと呼ばれます。

クラウドAIをブラウザや専用アプリから利用するだけなら、回答を生成するための主要な計算に手元のGPUは使われません。そのため、RadeonかGeForceかによってAIの回答品質が変わるわけではありません。

コードの相談、仕様の整理、エラー内容の確認、文章やアイデアの作成などをクラウドAIへ任せ、手元のPCではゲームエンジンを動かす使い方なら、Radeon搭載PCでも成立します。

一方、画像生成AIやローカルLLMなどをPCへ導入し、搭載したGPUで直接動かす場合は事情が変わります。このような使い方はローカルAIと呼ばれ、GPUの性能だけでなく、利用するソフトや開発環境がそのGPUへ対応しているかどうかが重要です。

GPUの性能とAIツールの使いやすさは別の問題

Radeonには、高いゲーム性能と大容量のVRAMを備えた製品があります。

VRAMとは、GPUが画像や計算データを一時的に置くための専用メモリです。一般的には、容量が大きいほど高解像度の画像や規模の大きなAIモデルを扱いやすくなります。そのため、スペック表だけを見ると、VRAM容量の大きいRadeonはローカルAIにも適しているように見えます。しかし、VRAMが多く、GPU自体の計算性能が高ければ、すべてのAIツールを問題なく動かせるわけではありません。

AIツールがGPUを利用するには、アプリとGPUの間をつなぐソフトウェア環境が必要です。

NVIDIAにはCUDA、AMDにはROCmがあります。

CUDAは、NVIDIA製GPUをゲームの描画以外の計算にも利用するための開発基盤です。NVIDIAは2006年にCUDAを導入し、その後、コンパイラ、ライブラリ、解析ツール、開発資料などを含む環境へ発展させてきました。

ROCmは、AMDが提供するGPU計算向けのソフトウェア基盤です。AIや大規模計算でAMD製GPUを利用するための実行環境、開発ツール、ライブラリなどが含まれます。

CUDAとROCmは似た役割を持ちますが、対応するソフト、情報量、導入手順、利用者の多さまで同じではありません。

ローカルAIではCUDAを基準とした環境が多い

NVIDIAは、CUDAを約20年にわたって開発してきました。

その間に、AIや科学計算の研究者、企業、ソフトウェア開発者がCUDAを利用し、多数のライブラリや開発ツール、導入情報が蓄積されています。

ローカルGPUを利用するAIツールや個人開発のアプリでは、最初にCUDA環境で動作確認されることがあります。導入手順にNVIDIA製GPUが必要と書かれていたり、配布パッケージがCUDA向けに用意されていたりするのは、この開発環境と利用者数の差が影響しています。

GeForceでは公開されている手順どおりに進めれば動くツールでも、Radeonでは別の導入方法や設定を探さなければならない場合があります。

  • Radeon向けの導入手順が用意されていない
  • 対応するGPUやOSが限定されている
  • 一部の機能が利用できない
  • 通常とは異なる設定やパッケージが必要になる
  • 古い情報と現在の情報が混在している
  • エラーが発生しても解決方法を見つけにくい

これは、RadeonのGPU性能が必ず低いという話ではありません。ハードウェアに計算能力があっても、目的のソフトがその能力を利用できなければ、実際の使い勝手にはつながらないということです。

RadeonでもローカルAIは動かせる

RadeonではローカルAIを動かせない、という説明も正確ではありません。

AMDはROCmの対応範囲を広げており、2026年7月時点の公式対応表では、Radeon RX 9070 XTを含む一部のRadeonがWindows版ROCmの対応対象に含まれています。
参考:Windows版ROCmの対応GPU一覧(AMD公式)

RX 9070 XTでは、Windows上のROCm Runtime、HIP SDK、ROCm Debuggerが対応対象です。Radeon向けのPyTorch環境も公式に案内されており、「ROCmはLinux専用で、Windowsでは利用できない」という説明は現在の状況と合いません。

ただし、ROCmがWindowsとRadeonへ対応したことと、すべてのAIアプリがGeForceと同じ手順で動くことは別です。

ROCmという基盤が対応しても、個々のアプリ、プラグイン、配布パッケージ、導入手順がRadeonへ対応していなければ、実際には利用できません。

公式の対応表にGPUの名前が掲載されていることだけで、目的のツールが動くと判断するのは危険です。購入前には、GPUだけでなくソフトごとの対応状況を確認する必要があります。

RX 9000シリーズにはAI用の機能も搭載されている

Radeon RX 9000シリーズは、RDNA 4と呼ばれる設計を採用しています。

RDNAは、AMDが主にゲーム向けGPUへ採用している設計の名称です。内部構造まで理解する必要はありませんが、RX 9000シリーズが従来製品から改良された世代であることを示しています。

RDNA 4には、第2世代のAIアクセラレータが搭載されています。AIアクセラレータは、ゲームや対応アプリで使われる機械学習処理を効率よく実行するための専用機能です。

ただし、AIアクセラレータを搭載しているだけで、すべての生成AIアプリを利用できるわけではありません。実際にその機能を使うには、ドライバー、ROCm、アプリなど、ソフトウェア側の対応も必要です。

現在のRadeonはハードウェアとしてAIを無視しているわけではありません。課題は、その性能を一般ユーザーが利用できる環境が、CUDAほど広く整っていないことです。

Radeon搭載PCの安さだけで判断してよいのか

BTOショップで比較すると、時期や構成によっては、Radeon搭載PCの価格とゲーム性能のバランスがよく見えることがあります。同じ予算で高い描画性能や大きなVRAM容量を確保し、CPU、メモリ、SSDへ予算を回せる可能性もあります。

ゲームを遊ぶことが主な目的なら、Radeonの価格は有力な判断材料です。

しかし、ローカルAIを使ったゲーム・アプリ開発まで考えるなら、購入価格だけで安いとは判断できません。

目的のツールが動かなければ、別の導入方法を調べる時間が必要です。設定やエラーの解決に時間を使い、最終的に目的のソフトを諦める可能性もあります。

後からGeForceへ買い替えれば、最初に抑えた価格差も失われます。PC本体の価格だけでなく、環境構築に必要な時間と、実際に利用できるソフトの範囲まで含めて判断する必要があります。

Ryzenを選んでもRadeonにそろえる必要はない

AMD製品について考えるとき、RyzenとRadeonが一つの構成として扱われることがあります。

しかし、RyzenとRadeonは別の部品です。RyzenはCPU、RadeonはGPUを指します。

CPUにRyzenを選んだからといって、GPUもRadeonにそろえる必要はありません。RyzenとNVIDIAのGeForceを組み合わせたPCも一般的です。

そのため、「AMD製CPUを搭載したPCはAI開発に向かない」という説明は正しくありません。

  • Ryzenはゲームやアプリの開発にも利用できる
  • Radeonでも通常のゲーム制作は可能
  • クラウドAI中心ならGPUメーカーの影響は小さい
  • ローカルAIを幅広く試すならGeForceが無難
  • Radeonを選ぶなら使用予定のツールを事前に確認する

CPUの価格性能比を重視してRyzenを選び、GPUにはAIツールの対応範囲を重視してGeForceを選ぶこともできます。CPUとGPUはメーカーをそろえることより、用途に合わせて選ぶことが重要です。

NVIDIAがCUDAを育てていた間、AMDは何をしていたのか

NVIDIAがCUDAを開発し、GPUをAIや大規模計算へ利用する環境を広げていることを、AMDも把握していたはずです。それにもかかわらず、なぜ現在まで大きな差が残っているのでしょうか。

この理由を、単純に「AMDが怠けていたから」と断定することはできません。AMDは2010年代前半から中盤にかけて、厳しい経営状態にありました。

AMDの公式決算によると、2014年第4四半期には3億6,400万ドルの純損失、2015年通期には6億6,000万ドルの純損失を計上しています。
参考:AMDの2014年第4四半期・通期決算AMDの2015年第4四半期・通期決算

現在のAMDはRyzen、EPYC、データセンター向けGPUなどを展開していますが、当時はCPU市場でIntel、GPU市場でNVIDIAと競争しながら、事業そのものを立て直さなければならない状況でした。

当時の財務状況を考えれば、将来すぐに利益へつながるとは限らないGPU向けソフトウェア基盤へ、NVIDIAと同じ規模で資金や人材を投じる余裕は現在より限られていたと考えるのが自然です。

ただし、AMDがどの事業へどの程度の資金や人材を配分していたのか、外部から具体的な内訳を断定することはできません。経営が厳しかったことは確認できますが、それだけでGPU向けソフトウェアの遅れをすべて説明できるわけでもありません。

利用者の立場から見れば、現在もRadeonでは導入に手間がかかるAIツールがあり、CUDAを前提とした環境との差が残っています。AMDに事情があったことを理解できても、購入前に感じる不安や不満まで消えるわけではありません。

その一方で、当時のAMDが何もせずに現在まで来たわけでもありません。問題は、AMDが取り組んでいたかどうかだけではなく、その取り組みがCUDAと同じ規模の利用環境へ結びつかなかったことです。

AMDも取り組んでいたが、CUDAとの差は簡単に埋まらない

AMDもGPUによる汎用計算へ取り組んできました。現在のROCm以前にも関連技術を開発しており、AIや大規模計算を無視していたわけではありません。

しかし、名称や方針の変更もあり、開発者が長期間使い続けられる一貫した環境、対応ソフトの多さ、導入情報の蓄積ではCUDAに及びませんでした。

ソフトウェア基盤の差は、性能の高いGPUを一世代投入しただけでは埋まりません。

  • 開発ツールとライブラリを継続して整備する
  • 不具合を修正し、互換性を維持する
  • 対応するGPUとOSを増やす
  • 外部のソフト開発者に採用してもらう
  • 導入手順とトラブル解決情報を蓄積する
  • 利用者が安心して使い続けられる環境を作る

利用者が増えるほどソフト開発者もCUDAを優先し、CUDA対応ソフトが増えるほどGeForceを選ぶ利用者が増えます。NVIDIAは、この循環を長い時間をかけて築いてきました。

一方のAMDは、厳しい経営状態からCPU事業を立て直しながら、GPUとソフトウェアの開発も続ける必要がありました。現在のAMDがROCmへ力を入れられるようになるまでには、会社そのものを再建するための時間も必要だったと考えられます。

その間にもCUDAを利用する開発者、対応ソフト、導入情報は増え続けました。一度広がった差は、AMDが資金と人材を投入し始めても、短期間で埋められるものではありません。

その結果、Radeonはゲーム性能やVRAM容量に魅力があっても、ローカルAIでは「使いたいソフトが動くかを一つずつ確認しなければならないGPU」になっています。

ユーザーが「AMDは今まで何をしていたのか」と不満を持つのは自然です。ハードウェアには魅力があるのに、それを幅広く利用するためのソフトウェア環境が追いついていないからです。

しかし、調べていくと、AMDが何もしていなかったという単純な話ではないことも分かります。経営難の中で事業を立て直し、GPU計算への取り組みを続けてきたものの、NVIDIAが先に築いた巨大な開発環境へ追いつくには長い時間が必要です。

購入者にとって重要なのは、AMDの努力を評価することと、現在の製品を選ぶ判断を分けることです。AMDの巻き返しには期待できても、今購入するPCは、現在使いたいソフトが動くかどうかを基準に選ぶ必要があります。

AMDは現在何をしているのか

現在のAMDは、ROCmをAIや大規模計算向けの主要なソフトウェア基盤として開発しています。

Windowsでは一部のRadeonがROCm Runtime、HIP SDK、ROCm Debuggerへ対応し、Radeon向けPyTorch環境も公式に案内されています。データセンター向けGPUだけでなく、一般向けRadeonでローカルAIを利用するための環境も整備され始めました。

そのため、「AMDは現在もAIを無視している」という評価は正しくありません。

一方で、ROCmを開発していることと、一般ユーザーがGeForceと同じ感覚ですべてのAIツールを使えることは別です。ツールごとの対応、安定性、導入方法、情報量には現在も差があります。

AMDが追い上げていることと、CUDAを中心とした環境へ追いついたことは同じではありません。

Radeonを選んでもよい用途

  • PCゲームの性能と価格を重視する
  • 同じ予算で大きなVRAM容量を確保したい
  • ChatGPTなどのクラウドAIを中心に使う
  • GodotやUnityで通常のゲーム制作を行う
  • 使用予定のAIツールがRadeonへ対応している
  • 導入方法や不具合を自分で調査できる

コードの作成や相談をクラウドAIへ任せ、手元のPCではゲームエンジンや画像編集ソフトを動かすのであれば、Radeonの価格性能比を活かせます。

GeForceを選んだほうが無難な用途

  • ローカル画像生成AIを幅広く試したい
  • ローカルLLMを動かしたい
  • AI音声、動画生成、3D生成にも興味がある
  • CUDAを前提とする開発ツールを使う
  • 今後使うAIツールがまだ決まっていない
  • 環境構築より制作へ時間を使いたい
  • 導入情報やトラブル解決例の多さを重視する

GPUの性能だけでなく、使えるソフトの数、導入情報、エラーの解決しやすさも、開発用PCの実用性能に含まれます。

将来の対応だけを前提にPCを選ばない

AMDによるROCmの改善やWindows対応は進んでいます。今後、RadeonでもローカルAIを扱いやすくなる可能性はあります。

しかし、現時点で使用予定のツールが動かないのであれば、「将来対応するかもしれない」という期待だけでPCを購入するのは危険です。

購入前には、少なくとも次の点を確認します。

  • 使用予定のゲームエンジンや制作ソフト
  • ローカル画像生成を行うか
  • ローカルLLMを使うか
  • AI音声、動画生成、3D生成を行うか
  • WindowsとLinuxのどちらを使うか
  • 使用予定のソフトがROCmへ対応しているか
  • 購入予定のRadeonが公式対応GPUに含まれているか
  • 現在利用できる導入手順と既知の問題

現在すでに目的のツールがRadeonへ対応しているなら、将来性だけを理由に避ける必要はありません。具体的な用途が決まっていない場合は、対応範囲と情報量の多いGeForceを選ぶほうが失敗を避けやすくなります。

Radeonは安い。しかし、開発用PCとして安いとは限らない

Radeonは、ゲーム用GPUとして価格と性能のバランスに優れた製品です。大容量のVRAMを搭載したモデルもあり、純粋にゲームを遊ぶ用途や通常のゲーム制作では有力な選択肢になります。

AMDはROCmのWindows対応やRadeonへの対応を進めており、RadeonでローカルAIを利用できる範囲も以前より広がりました。

それでも、ローカルAIを利用したゲーム・アプリ開発では、現在もGeForceのほうが対応ソフト、導入情報、トラブル解決の面で有利です。

AMDが厳しい経営状態にあったことは、ソフトウェア環境で遅れた背景の一つです。しかし、それだけが理由ではありません。NVIDIAは生成AIが一般化するより前からCUDAを育て、開発者、対応ソフト、情報を増やしてきました。その長期間の積み重ねが現在の差につながっています。

AMDも現在はROCmへ力を入れていますが、追い上げていることと、CUDAを中心とした環境へ追いついたことは同じではありません。

BTOショップでRadeon搭載PCが安く見えても、ゲームやアプリの開発を目的にするなら、価格だけで決めるべきではありません。

確認すべきなのは、ベンチマーク上のフレームレートだけではなく、自分が使おうとしている開発ツールやAIが、そのGPUで実際に動くかどうかです。

クラウドAIを中心に使い、ゲーム性能を重視するならRadeonにも十分な価値があります。一方、ローカルAIを含む幅広い開発環境を求めるなら、現在はGeForceを選ぶほうが無難です。

Radeonは購入価格を抑えられても、利用できるツール、環境構築に必要な時間、将来の買い替えまで含めれば、必ずしも最も安い選択になるとは限りません。

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